移ろいゆく季節の中でほんの少し足を止め、その時その時に寄り添った一杯をゆっくり味わってみませんか? 季節を…
2025.09.01 up
福よ こいこい 縁起物 <9月>
日本には暮らしに根付いた「縁起物」がたくさんあります。
長い歴史の中で人々は、五穀豊穣、長寿、無病息災、商売繁盛、家内安全など、さまざまな願いや祈りを込めて「縁起が良い」とされるものを食し、飾り、身につけ、暮らしてきました。
その思いは今も大切に受け継がれています。
このコーナーでは、毎月季節にちなんだ「縁起物」をご紹介。
招福開運を願って、気軽に暮らしに取り入れてみてくださいね!
9月の縁起物① 菊
9月9日は五節句のひとつ「重陽(ちょうよう)の節句」。
奇数は「陽」の数字とされ、その中でも一番大きな数字「9」が重なることから、とても縁起のいい日とされてきました。
五節句についてはこちらをチェック!
別名「菊の節句」とも呼ばれ、平安時代の宮中では、菊を愛でたり、菊の花を浮かべた「菊酒」をいただいて、長寿を願う行事が行われていました。
今ではあまり馴染みがなくなってしまいましたが、これは旧暦から新暦へと改暦されたことで、ちょうど菊の見頃とずれてしまったのが一因と言われています。
桜と並んで日本の国花である菊。
仏花としての印象から「縁起が悪いのでは?」と思う方もいるかもしれませんが、そんなことはありません。
菊は霊力の高い花とされ、邪気を祓い、古くから生命力の象徴ともされてきました。
仙人の住む地に咲くとも言われ、長寿をもたらす花として親しまれていたのです。
さらに、皇室の紋章にも用いられるなど、気品と格式を象徴する花でもあります。
漂う香りも凛としていて、上品な美しさがありますね。
品種も豊富で、今では一年中手に入る菊ですが、やっぱり旬は秋。これからがちょうど見頃です。
飾って楽しむのはもちろんですが、食用菊を使った「菊花茶」を味わうのもおすすめ。
食用菊は目の疲れを癒したり、コレステロールを下げて血圧を安定させる働きもあるといわれています。
菊花茶の詳しい作り方はこちらをチェック!
9月9日の重陽の節句には菊にふれて、健康と長寿を願うひとときを過ごしてみませんか?
9月の縁起物② 新米
早い地域では8月末から、そして多くの地域では9月に入るとスーパーやお米屋さんに「新米」が並びはじめます。
日本人の主食であるお米は、私たちの歴史や暮らしと深く結びついていて、なくてはならない存在です。
古くから日本では「お米には神様の力が宿る」と考えられ、とても神聖なものとされてきました。お
供えのお餅やお神酒(おみき)なども、すべてお米からできています。
なかでも新米は特別な存在。
伊勢神宮では、その年初めて収穫された新米を神様にお供えする「神嘗祭(かんなめさい)」が行われます。
かつては祝日でもあったほど大切な神事で、伊勢ではこのお祭りが終わるまでは新米を口にしない、という習わしもあったそうです。
また、神社で祈祷を受けたりお守りをいただくときに納める「初穂料(はつほりょう)」という言葉。
これはその年の初めての稲穂=初穂を神様に感謝を込めて捧げたことに由来しています。
そこからも、新米がいかに特別な存在だったかがわかりますね。
さらに日本には「初物」を食べると縁起がいい、という風習があります。初鰹や初茄子などが有名ですが、新米もまさにそのひとつ。
また「米」という字は「八」と「十」が組み合わさってできていて、末広がりで縁起がいいという説も。
その縁起の良さから、贈り物にもおすすめです。
みずみずしく、ツヤツヤと輝く炊きたての新米は格別のおいしさ。
ふっくらとした甘みをしっかり楽しむために、炊き方を今一度おさらいしておきましょう。
詳しくはこちらをチェック
読みもの
[今月のRemind 10月編] この季節だけの美味しさ!新米の定義と美味しく炊く方法
2020.10.17 up
10月になり、スーパーなどで「新米」と書かれたシールの付いたお米を見かけるようになりました。お米の美味しい季節の到来です…
10月になり、スーパーなどで「新米」と書かれたシールの付いたお米を見かけるようになりました。お米の美味しい季節の到来です…
今の季節だけの特別な美味しさを、ぜひ味わってみてください。
9月の縁起物③ トンボ
涼しい風が心地よい季節になると、空をすいすいと舞うトンボの姿をよく見かけるようになります。
特によく知られている「赤とんぼ」は、成熟するとお腹が赤くなるトンボの総称。
中でも代表的なアキアカネは、夏の間は山で過ごし、秋になると里へ降りてくるため、その姿を見ると秋の訪れを感じる存在となっています。
そんなトンボ、実は昔から“縁起のいい虫”として親しまれてきました。
トンボは前にしか進まず、後ろへ下がることがありません。
そのため“不退転”の象徴とされ、勝負に強い「勝ち虫」として武士たちの間で好まれました。
武具や装束などにトンボの模様が取り入れられたのも、この縁起の良さからです。
さらに、トンボは稲を荒らす害虫を食べてくれる益虫でもあります。農作物を守ってくれる存在として、豊作を願う象徴にもなっていたんですね。
今でも、和雑貨や和小物などにトンボ柄をよく見かけます。
実りの秋を迎えるこの季節、空を飛ぶトンボに目をとめたり、トンボ柄のアイテムを取り入れたりして、秋らしい縁起を暮らしに添えてみてはいかがでしょうか。
古くから大切にされてきた日本の縁起物。
意識して暮らしに取り入れてみれば、なんでもない一日もちょっぴり楽しくなるかも?
縁起物のある暮らしで、どんどん福を呼び込みましょう♪