2021.03.26 up

[今月のRemind 3月編] 朧月ってどんな月?春の夜を楽しもう

天気予報などで朧月(おぼろづき)や朧月夜(おぼろづきよ)という言葉を耳にするこの季節。朧月は、春特有の気候で起こる霧や靄(もや)で霞んだ月のことをいい、非常に風情のある月夜として日本では古くから愛され、多くの歌にも詠まれてきました。

 

朧月夜は月自体がはっきりと見える訳でなないので天体観測などには向いていませんが、少しずつ暖かくなってきた春の夜、そのぼやけた様をしっとりと眺めながら癒されてみてはいかがでしょう。

 

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2021.03.01 up

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朧月ってどんな月?

朧(おぼろ)とは、ぼうっと薄く霞んでいる様子のことをいい、空一面をヴェールのように覆う雲を、朧雲(おぼろぐも)といいます。朧雲を透して太陽や月を見ると、まるで曇りガラスを透して見ているように輪郭がぼやけ、幻想的な太陽や月になります。そんな風に月の輪郭がはっきりせずに、朧雲の中に浮かぶ月のことを朧月といいます。

 

月の形に決まりはなく、満月でも三日月でも、朧雲の中にぼんやりと霞んでいる月を朧月といいます。

 

 

 

靄(もや)、霧(きり)、霞(かすみ)、朧、何が違うの?

視界がすっきりせずに、目の前が白くかすんでいる状態を、靄、霧、霞など色んな言い方をするかと思います。それぞれどう違うかをご存知ですか?

 

靄と霧

靄と霧は気象用語で、空気中の水蒸気が細かい水滴となって浮かんでいる状態です。水平視程(肉眼で見通せる水平方向の距離)が、1km以上の場合を「靄(もや)」、1km未満の場合を「霧(きり)」と呼びます。

 

霞と朧

霞と朧は気象用語ではありません。霧や薄い煙のようなものがたなびいて、白っぽく見える状態ををまとめて「霞(かすみ)」といい、霞も朧も同じ現象を指しています。昼間に起こる現象を霞、夜に起こる現象を朧といいます。

同じ現象でも、時間によって違う名前をつけるなんて、日本語ってとても繊細で美しいですね。

 

 

 

春ならではの朧月夜

 

春の気候と霞・朧

春霞(はるがすみ)、という言葉があるように、春の空はよく霞みます。春になり暖かくなると、植物の水分が蒸散するなどの理由で大気中の水分が増えます。気温の低下などによって微粒子状となった水分は、太陽光を散乱させて目に見える状態になり、それによって景色が霞むのです。昼と夜の気温差の大きい日に起こりやすいといわれています。

 

また、春になると偏西風と低気圧の発達により、中国大陸から日本へ飛来する黄砂の量が増えます。時期的に花粉もありますね。そんな黄砂や花粉を含むチリやホコリが地上付近に貯まってしまうことも霞む要因のひとつになっています。

 

「朧月なら翌日は雨」ということわざのような言い伝えがあります。これらは観天望気(かんてんぼうき)といい、自然現象や生物の行動の様子などから天気の変化を予測する言葉です。月が朧に見えるのは、簡単にいえば空気が湿っているから。朧月は低気圧が近づいている証拠であり、翌日は雨になることが多いのだとか。

 

 

歌の中の朧月

朧月は、非常に風情のあるものとして昔から慕われており、春の季語として俳句や短歌などにも多く登場しています。曖昧でどことなく儚げだからこそ美しい、そんな様子は、一般的にいわれる月の美しさとはまた別で、歌に詠みたくなるのかもしれませんね。

 

また、小学校の音楽の教科書にもある唱歌「朧月夜」も有名です。

 

菜の花畠に、入日薄れ、見わたす山の端は、霞ふかし。

 

から始まるこの歌は、1番の歌詞では「霞ふかし」だったのが、2番の最後には「さながら霞める 朧月夜。」となり、情景は夕方から夜になっています。菜の花畑に夕日が沈み、次第にどんなものも霞んでしまう朧月夜になっていく様を歌っているのですね。霞から朧へ、言葉の意味をきちんと知ると、歌の情景がより鮮明に浮かび上がってきます。

 

ちなみに、歌の舞台となっている菜の花畑は、作詞の高野辰之氏の生まれ故郷である長野県飯山の菜の花畑だそうです。

 

 

 

朧雲のかかった夜空では、星は見えません。しかし、だからこそポツンと浮かぶ儚げな朧月がより趣深く見えてきます。お月見の時期でなければ、あえてこの時期に夜空を見上げ、月を観察することはないかもしれませんが、春のこの時期の月に朧月と名前を付け、風情を楽しんできた昔の人に倣って、あえてはっきりとしないこのぼんやりとした月夜を楽しんでみるものいいですね。

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